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【IKIGAI企業インタビュー】働くことが「生きがい」になる現場。澤田建設の「あたりまえ崩し」とは?(澤田建設株式会社)

かつて「公共事業=無駄遣い」と批判された時代、土木業界は大きな逆風にさらされました。そうした中でも、社員の「働きがい」と「生きがい」を大切に守り続けてきたのが、山口県防府市の澤田建設です。

「あたりまえの反対は、ありがとうです」。そう語る澤田社長の言葉には、今日、社員とともに働ける感謝の思いがあふれていました。社員や協力会社、地域の人々とともに成長する。その姿勢が、会社を「キャンパス」と呼ぶ発想にもつながっています。

澤田建設株式会社:左から順に 得重 紗織さん(総務部)、澤田 健規さん(代表取締役社長)、澤重 修司さん(取締役総務部長)

1.まちを育てる「循環」の発想

――今日は、ブライト500を3年連続で取得している澤田建設の澤田社長に、「従業員の働きがい、そして生きがいとは」というテーマでお話をうかがいにきました。まずは事業内容を簡単に教えてください。

澤田社長:澤田建設は、山口県防府市に本社を置く総合建設業です。1943年に土木工事業として創業し、現在は土木、建築の両分野で地域のインフラと暮らしを支えています。

――それにしても、御社のこの社屋は本当に素敵ですね。木がふんだんに使われていて、温もりを感じます。でも、防府市といえば「コンクリートの街」という印象があります。しかも御社は、土木業で創業された会社。木材よりも、コンクリートのほうがずっと身近なのではありませんか?

澤田社長:ええ。私たちは長年、橋や道路といったインフラをつくる「コンクリートのプロ」としてやってきました。

転機となったのは、2009年の夏に起きた集中豪雨です。この災害では、死者19名(関連死を含む)、負傷者35名が報告されています。とくに、防府市の特別養護老人ホームでは、土石流により7名の入所者が犠牲となる痛ましい被害が発生しました。

――よく覚えています。全国でも繰り返し報道されました。

澤田社長:私たちも初動対応から復旧工事まで関わったのですが、山に入って感じたのは、木が手入れされず、山が「死んでいた」ことでした。

それまで、木を使うことにあまり関心がなかった私たちでしたが、このままでは山が荒れ、再び人命に危険が及びかねないという思いが芽生えました。そこからです。建設会社として「木を使う側に回る」と決めたのは。

――なるほど。澤田建設では「まちづくり」「人づくり」をいう言葉を掲げています。「まちづくり」というと「近代化」というイメージがありますが、澤田社長にとっての「まちづくり」は、もっと深いところにあるのですね。

澤田社長:山や森林を守り育てることが、川の流れを守り、海を守り、その周辺に住む人々の生活と命を守ることに繋がります。

現在は、持続可能な開発目標を「SDGs」といいますね。林業、農業、水産業、そして建設業の循環が、まちを育て、人を守ります。そういう循環型の持続可能な地域社会を、私たちは、自分たちの仕事である建設業の延長線上でつくっていきたい。そう考えています。

そこで現在は、建築部門でCLT(木を交差状に重ねた強度の高い木質建材)などの新しい木造技術をとり入れています。この社屋もその一環として建てました。

2.社員たちが教えてくれた、土木業の誇り

――土木業といえば、マスコミに厳しい目を向けられていた時代がありました。ちょうど防府市の土砂崩れの頃ではなかったでしょうか。

澤田社長:それはもう大変でした。2009年、「コンクリートから人へ」というスローガンのもと、公共事業費が大幅に削減されました。マスコミは「公共事業=無駄遣い」という論調で、建設業を悪者のように扱いました。それによって、建設業界には社会全体から厳しい目が向けられました。我々は「自分たちの仕事は必要ないのではないか」と自信を失い、土木業からの撤退を真剣に考えたこと時期がありました。

――撤退しなかった理由は、どこにあったのですか?

澤田社長:あの土砂災害での、ある社員の行動に理由があります。
立っていることもままならないほどの激流が1回目の土石流に続き、2回目の土石流が来ると知って「逃げてください!」と叫びながら救命にあたっていたんです。土石流の轟音が鳴り響く中、自らの命の危険を顧みずに、目の前の命をひたすらに救おうとしていたんです!

――それはすごい。想像を絶する極限の中で、自分の命をかなぐり捨て、人のために行動する。これは真の強さがなければできません。

澤田社長:ええ。他の社員も同じでした。家の2階に取り残されたお年寄りを助けに行くなど、人命救助を優先しました。もちろん、自衛隊も大勢来てくれました。ただ、彼らは命令がないと動けない。我々の社員は、「今、何が急務か」と自ら判断し、「助けられる命」を懸命に守り続けた。あのときの出来事が「土木業とは何か」「我々の使命は何か」と見つめ直すきっかけになりました。

――自衛隊の活躍はくり返し報道されましたが、民間人の命がけの救助活動は、あまり報じられなかったように思います。

澤田社長:残念ながら、その通りです。あのときまでは「土木事業は税金の無駄遣い」とマスコミがつくり上げたイメージに我々は苦しみ抜いた。でも、有事のとき、マスコミや自衛隊が駆けつけるその道をつくっているのは、我々です。そして、災害からの復興に最前線で働き続けるのも、土木業の人間です。

土木とは、人の命と生活を支えるインフラ産業。その誇りを、私は社員たちの行動から教わったのです。

3.社員への「御恩返し」が原動力に

――澤田建設が健康経営宣言したのは、2017年。経済産業省が健康経営優良法人認定制度を創設したのが2016年ですから、いち早く健康経営を始められたのですね。そこにはどんな思いがあったのですか?

澤田社長:実は私、10歳のとき、九死に一生を得た経験をしました。担当医に「20歳まで生きられるかどうか」といわれ、子ども心に「何を!40歳まで思い切り生きてやろう」と決意。現在、私は63歳です。40歳を過ぎたとき、この2周目の人生は「御恩返し」で生きようと決めました。

あのときの経験から、健康の重要性を人一倍強く感じるようになりました。社員の健康を守るのも、社員たちへの御恩返し。会社には社員の健康増進を図り、職場環境を整備していく義務があると考えています。

――「恩返し」ではなく「御恩返し」。すごい思いですね。

澤田社長:社員たちとの出会いは、一期一会です。「今日、元気に会社に来てくれたことに感謝」という思いで日々過ごしています。

――一日一日を大切に過ごすという澤田社長の思いが伝わってきます。そう考えるに至ったきっかけはあるのですか。

澤田社長:私は結婚して、後継ぎとしてこの会社に入りました。当時、弊社では、健康診断をやっておらず、驚きました。「これはなんとかしなければ」と思っていた矢先、土木の現場の所長が突然亡くなるという出来事が起こったのです。

その所長は、前日まではとても元気だったのですが、朝、現場で頭痛がするといって病院に行き、昼過ぎに亡くなってしまったのです。くも膜下出血でした。こんなことは二度とあってはならないと痛感。弊社では、経産省が健康経営の取り組みをスタートする以前から、健康事業には力を入れてきました。

――社員が休まず出社することは「当たり前」ではなく「奇跡」。だから、すべての社員に「ありがとう」という思いが強いのですね。

通常、健康経営は、従業員の心身の健康のために働きやすさを整えて、働きがいを築いていく、という方向で進んでいきます。ところが、澤田社長は、先に「人を育てる」という使命感があって、その一環として健康経営に取り組んでいる。すごいなあと思う一方で、それを形にしてきた澤重さんは、実は、大変な思いをしてきたのではないですか?

澤重さん:そうですね。社長は出張で全国を飛び回り、「これは社員のためになる」と思うと積極的に経営に取り入れていきます。健康経営もいち早くスタートを切りました。でも、周りが「やっていない」ということは、「それって何?」「どうやってやるの?」と現場は「?」から入るしかない。まさに手探りで、たくさん悩みました。

そうしたときに立ち返ったのは、「社員の健康を守ることが、会社を守ることになる」という社長の使命感です。会社の年度方針の冒頭に「健康経営」というワードを入れたのもその表れです。これを契機に「健康経営」という言葉が社内に浸透し、各部門で健康への意識が広がっていきました。

私たちは社員数83名の中小企業です。このうち50名が現場に出ています。一人ひとりの役割は重く、それぞれが現場の「主役」です。一人抜けてしまうと、大変なことになる。建設会社は社員の健康こそが資本です。

そのために必要なことを一つ一つ施策として着実に取り組んでいく。それが、私たち澤田建設の健康経営です。

4.会社は自己成長の「場」であり「キャンパス」

――澤田建設では、本社を「キャンパス」と呼んでいますね。そこには、どのような思いが込められているのですか?

澤田社長:ものづくりとは、「ゼロからイチ」を生み出す仕事です。とくに建設業は、資格を取得するなど、生涯を通して学習が必要です。つまり、会社とは社員一人ひとりが学び、自己成長する「場」なのです。

アメリカのIT企業では本社を「キャンパス」と呼び、そこで働く人たちはまるで学生のように目を輝かせ、日々挑戦している。その姿に強く惹かれました。

そこで、弊社の社屋を建て替える際、ワンフロアの広々とした空間にし、社員同士が自然に顔を合わせ、気軽に声をかけあえるような「開かれた場」をつくりたいと思ったのです。

――目標数字をペタペタと貼っている会社もよくありますが、「人を大切にする企業」か「数字を大切する企業」かは、社屋に表れますね。

澤田社長:そもそも、私たちは建設業であり、建物に対する愛情は人一倍強いのです。たとえば「建屋(たてや)」や「箱もの」などと建物を呼ぶ人がいますが、それを聞くと悲しくなります。すべての建物には、建設に携わった人たちの思いと労力が込められている。それが社屋となれば、社員一人ひとりが人生の3分の1を過ごす場所。だからこそ、働く人にとって「心地よく、誇れる場所」としたい。私たちはそんな想いを「キャンパス」という言葉に込めています。

――なぜ、そんなにも社員に愛情を持って接することができるのですか。

澤田社長:「悲観的に考え、楽観的に行動する」。これが経営者の本質だと私は考えています。とくに中小企業は、どれだけ堅実に経営していても、突然、経営環境が大きく変わることがあります。災害、事故、協力会社の倒産。私たちも何度もその危機を肌で感じてきました。

だから私は、社員がどこへ行っても胸を張り、生きがいを持って働ける能力を築いてもらいたい。そう思っているのです。

――そこで「学びの場」としての会社づくりを意識されているということですか。

澤田社長:ええ。とにかく現場で「経験を積む」こと。これが人を一番成長させます。うちの会社は、若くして責任ある立場をどんどん任せていきます。プレッシャーはあるでしょうが、それが「人を育てる土壌」になる。私たちは社員に「責任ある立場」で「リアルな現場」を経験してもらうことで、自信と誇り、そして生きがいを育てていってほしいと願っています。

――まさに、澤田建設の現場は「学校」なのですね。

澤田社長:学校には卒業があります。独立したい社員には、どんどんのれんわけをし、応援したいと考えています。実際、のれんわけの第一号がすでに出ています。20代の社員です。彼のように会社を立ち上げ、澤田建設の協力会社としてお互い対等に横のつながりを築ける人物を増やしていけば、社会はもっともっとよくなります。私は、優秀な社員を抱え込むようなことをしたくない。このキャンパスで学んだ人たちには、大きく羽ばたき、ともに素晴らしい世界を築く仲間になって欲しいと願っています。

5.「あたりまえ」を崩すと「ありがとう」が見えてくる

――澤田社長の社員への愛は留まることがない、と感じます。

澤田社長:ありがとうございます。私たちのいう「人づくり」は社員のことだけではないのですよ。協力会社との関係もその一環です。

私たちは60社以上の会社さんと共助の仕組みを築いています。たとえば何かを安く仕入れれば、誰かにそのしわ寄せがいきます。そんな社会は人を幸せにしません。今、建設業界では、採用が大きな課題になっています。限られた人財を取り合うのではなく、ともに大切にしていける仕組みを目指しています。

――いいですね。学生の親御さんは、我が子が大手企業に勤めると「安心」と感じますが、実際は大手に入れば自分がやりたい仕事ができるのかといえば、違ってくる。反対に、社員数の限られている中小企業だからこそ、責任あるやりがいのある仕事を若くして任されるとういことがありますね。

澤田社長:その通りです。また、都会ではなく、地域社会だからこそ「おもしろい」ことができることもあります。たとえば、我々は「レノファ山口FC」というJリーグチームのスポンサーをしています。こんなこと、大都市ではできないことです。山口県は、スポーツや文化のレベルが高く、そこは惜しみなく協力させていただいています。

また、地元のお祭りにも社員たちとボランティアで積極的に参加。沿道整理をしていたら、見ず知らずの人から「ありがとう」と声をかけられたと喜んでいた社員もいます。

――公共事業では、「税金の無駄遣い」という見方がいまだにあり、「ありがとう」とはなかなかいわれないと思います。でも、私たちがあたりまえに通っている道路は、現場で責任感を持って懸命に働いてくれている人たちの手でつくられている。私たちは、そのありがたさにもっと気づかなければいけませんね。

澤田社長:実は、私たちは「あたりまえ崩し」という活動をしているのですよ。「あたりまえ」の反対語がわかりますか? 「ありがとう」です。「あたりまえ」と考えると消えてしまう感謝が、「あたりまえ」というフィルターを外すと見えてくる。生きがいや働きがいとは、「あたりまえ」という思考を見直し、「ありがとう」という言葉が自然と口からこぼれるようになったときに、育まれていくのではないか。そう思うのです。

取材後記

澤田建設の社屋に足を踏み入れた瞬間、木の温もりに包まれました。それ以上に心に残ったのは、社員や地域に注がれる社長の深い愛情です。土木業というと無機質なイメージを持たれがちですが、澤田社長の言葉には、命と暮らしを守るという強い使命感が込められていました。

なかでも印象的だったのが、「あたりまえ崩し」という考え方。「あたりまえ」の反対は「ありがとう」。働けること、仲間たちと今日も会えること、地域に貢献できること。そのすべてが奇跡であり、感謝すべきことなのだと、あらためて気づかされました。

「人づくり」「まちづくり」、そして「生きがいづくり」。それこそが澤田建設の仕事の根幹であり、社屋を「キャンパス」と呼ぶ理由なのでしょう。


【企業データ】
会社名:
澤田建設株式会社
事業内容:総合建設業
所在地:〒747-0054 山口県防府市開出西町23番1号
資本金:72百万円
従業員数:83名

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