【IKIGAI探求 Vol.3】IKIGAIチャートの誕生と、日本の「生きがい」とのズレ
ー キャリアの「正解」探しに、もう疲弊していませんか? ー
「好きなこと」「得意なこと」「稼げること」を重ねた先に成功がある──。
世界中で広まった「IKIGAIチャート」は、かつて多くの人のキャリアを照らしました。しかし、VUCA(予測不能)な現代において、経済的な成功を前提としたキャリア設計は、社会や会社に期待できなくなった私たちにとって、もはや「他人事」になっていませんか?
「どうせ自分には4つの条件は揃わない」「生きがいなんて、一部の成功者の話だ」と、無関心を装うあなたこそ、この記事を読み進めてください。
この記事では、経済成長が見込めない時代に限界を迎えたIKIGAIチャートの構造的な問題を指摘し、そこからこぼれ落ちた「迷いや孤独」を抱えたままでも、生きがいとつながり続けるための新しい構造、IKIGAImandala™というキャリア設計にとどまらない、人生における新たな価値観を探索するツールの可能性を示唆します。
1. 「完成形」を求めるIKIGAIチャートが、現代の私たちに合わない理由
IKIGAIチャートは、2014年頃から世界中に拡散され、キャリアデザインの明確な枠組みを提供しました。しかし、その視覚的な分かりやすさが故に、一つの誤解を生んでしまいました。
それは、「IKIGAI=4つの条件がすべて重なった“完成形”・“達成条件”」という理解です。
この「完成形」モデルは、「欠如前提」から始まります。「今、何かが足りていないから、それを満たさなければ生きがいには到達できない」というメッセージが、図の構造上、潜在的に生まれてしまうのです。チャートの構造から「見えにくくなった」人の影の側面
IKIGAIチャートは、「好き」「得意」といったポジティブで語りやすい要素に焦点が当たりがちです。その結果、誰もが生きがいを追求する過程で経験する、以下のような「影の側面」は、図の枠外に置かれ、語りづらくなってしまいました。
- 迷い・停滞
- 義務感・無力感
- 孤立感・報われなさ
経済的な成長が見込めず、未来の保証もないVUCA時代において、私たちは常に「迷い」や「無力感」と隣り合わせです。「完成形」を求められるチャートは、不完全な自分と生きがいとの間に、かえって深い溝を作ってしまったのです。
2. IKIGAIチャートが残した功績と、生じた「ズレ」
IKIGAIチャートは、その視覚的な分かりやすさと、現代の仕事・キャリア文脈との相性の良さから、短期間で世界中に広まり、多くの人が自分の働き方や人生を考える「入口」をつくったという点で、疑いなく大きな功績を残しました。
日本においても、キャリアデザイン研究の第一人者である田中 研之輔教授(法政大学)の監修のもと、500人以上の実施実績を持つワークシートとして体系化されており、その影響は小さくありません。
一方で、その普及の過程で「IKIGAI=4条件がすべて重なった完成形・達成条件」という理解が定着してしまいました。
作成者であるマーク・ウィン氏自身、後年にブログで、この図が日本の「生きがい」研究を体系的に整理したものではなく、彼自身のキャリアの問いを整理するために個人的に描かれたものであることを振り返っています。日本の「生きがい」が持つ日常性や曖昧さ、深さは、この図によっては十分に表現されていませんでした。
特に、IKIGAIという言葉そのものが、いつの間にか「IKIGAIチャートの中心に何を書くか」という問いに置き換えられ、IKIGAI=IKIGAIチャートという理解が広く共有されてしまったことこそが、この図がもたらした最大の「ズレ」だったのかもしれません。
3. 【IKIGAImandala™】「不完全さ」を土台に。問いを扱い続ける新しい構造
IKIGAIチャートが私たちに残した問いは、「生きがいを、条件や完成形として固定せずに、どう扱えばよいのか?」です。この本質的な問いに応えるために生まれたのが、IKIGAImandala™(イキガイマンダラ)です。
IKIGAImandala™は、「生きがい」を「見つけるもの」や「達成するもの」として扱うことをやめ、不完全さや孤独を含んだままでもつながり続けられることを目的とした「地図」です。IKIGAImandala™が採用する「充足前提」という考え方。
IKIGAImandala™は、「何かが足りない」という欠如前提ではなく、「充足前提」に立ちます。
「今、あなたが感じている感覚・状態」から、すでに生きがいとのつながりが始まっていると捉えるため、「生きがい探しの第一歩」を躊躇している無関心層にも、優しく向き合うことができます。
| 観点 | IKIGAIチャート | IKIGAImandala™ |
| 出発点の前提 | 欠如前提:4つすべてが必要 | 充足前提:今ある感覚・状態から始めてよい |
| 深層の扱い | なし | 嘆きや諦め、葛藤も対象に含める |
| 全体構造 | 単一の図(静的) | 表層と深層を行き来する構造(動的) |
「ありのまま」と「共にある」を土台にする
IKIGAImandala™では、表層の4要素(好き・得意・必要・稼げる)の外側に、「ありのまま」と「共にある」という、人生の土台となる要素を配置します。さらに、深層の感情を扱う構造を加えることで、「無力感」や「孤立感」といった影の側面も含めて、生きがいを多角的に捉えることを可能にしています。
これは、生きがいを「整った答え」としてではなく、「日常の中で何度も確かめ直すための地図」として機能させるための設計です。
4. 答えではなく、「問い」を置き続けることが生きがいになる
IKIGAIチャートは、キャリアを考える大きなきっかけを与えてくれました。しかし、変化の激しい現代では、「完成形」を求める思考こそが、生きがいを遠ざけている可能性があります。
IKIGAImandala™が示すのは、「答えを示すことよりも、問いを置き続けること」。
経済的な成功や、社会からの承認といった外側の条件に左右されず、自分の内側にある「迷い」「孤独」「嘆き」といった不完全さを含んだままでも、生きがいとのつながりを保ち続けるための視点を、この新しい構造は提供します。
IKIGAIチャート含め、経済的な成功を前提とした設計に疲れてしまったあなたにこそ、「不完全さ」を抱きしめる新しい地図が必要です。
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