【イベントレポート】学生の不安と社会人の課題が化学反応し昇華する〜IKIGAI発見ワークショップ@コクヨマーケティング株式会社
2025年6月からスタートした、関西大学横山ゼミ主宰の「かちぞうゼミ(価値創造ゼミの愛称)2025」も第11回を迎え、私たち日本IKIGAIデザイン協会はゼミに参画している京都産業大学森口ゼミの学生2名とともにコクヨマーケティング株式会社を訪れました。
就活と就職に不安を抱く学生と日々、仕事と向き合う社会人。それぞれの課題を開示し、IKIGAImandala™を共通言語として「働く意味」を問い直すワークショップを行い、双方に気づきと希望があふれる対話の場が生まれました。

主催:京都産業大学 森口先生
ファシリテーター:京都産業大学 森口ゼミ「ハッピーターン」チーム2年生 伊藤 勇生さん、金子 穏人さん
サポート:一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会 熊倉 利和(代表理事)、渡辺 由美子(理事)
協力:コクヨマーケティング株式会社 高橋 伸年さん(部長)、三井 柾輝さん、堤 小次郎さん
1. 「就活は喪失の始まりか?」学生の問いかけから対話が始まる
『大学2回生の私たちは就活を控えています」ワークショップ冒頭で学生たちが語り始めました。
「就活はもちろん、『働く』への第一歩です。しかし、自分に向いている仕事を探し、自分の強みについて思考を深め、エントリーシートを埋めていく中で不安ばかりが募ります。就活は社会のふるいにかけられる試練にすぎないように感じられるのです」
「加えて、日本人の5%しか『働きがい』を感じていないとのデータにも出会いました。95%もの働く人々が『働きがい』を持てずに働いている。社会人になると何かを失っていくのかな、そう思わされました」
「就活が働くことの第一歩なら、働きながら何かを失っていく、その喪失の始まりに私たちは立っているのでしょうか」
「そんな不安の中で、私たちはIKIGAImandala™に出会いました。」
IKIGAImandala™とは一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会が開発した、4つの質問に答えながら自分の価値観を整理し、言語化して『生きがい』を見つけていくワークシートです。
①好きなこと
②得意なこと
③喜ばれること
④稼げること
それぞれの輪の中に答えを書き込んでいき、4つの輪の重なるところに共通するワードが「生きがい」として浮かび上がる仕組みになっています。

このワークシートに取り組むことで、学生たちは現時点での自分たちの生きがいを発見できたと語ります。さらに周囲の学生仲間や家族に実践する中で、学生たちは以下の3つのことを感じたそうです。
・「生きがい」は普段の日常の中にある
・IKIGAImandala™は今後の自分の方向性、生き方を考えるきっかけになる
・ワークシートを実践した相手との仲や相互理解がより深まる
働く人のたった5%しか「働きがい」を感じられていない、これは社会課題ではないか。「働きがい(エンゲージメント)」がこんなに低い社会だけれど、生きがいあふれる社会に変えていくことはできないだろうか。学生たちはこう考えるようになりました。
IKIGAImandala™を社会人に実践することで、社会人の「働きがい」や「生きがい」を見つけて言語化し、意識することで今後の職業人生と人生そのものに活かしてもらうことはできないだろうか。
「私たち学生の力で、社会人の「生きがい」を社会へコネクト(接続)したい」
「この願いが叶えば、私たち学生たちの就活やその後に続く人生への喪失の予感と不安を和らげるものになります。私たちは希望を持って就活に臨みたいのです」
「これまでは学生仲間が相手の実践が多かったので、今日は初めて社会人の方々とセッションすることになります。社会人の皆さんに取り組んでいただいて、ご意見やご感想などいただければと思います」
2. リフレーミング、再確認、そして言語化へ
IKIGAImandala™セッションが始まりました。セッションはこんな手順で進行します。
①学生と社会人のペアを作る
②ペア内で自己紹介をし、アイスブレイク
③IKIGAImandala™の4つの質問を一緒に考える
④4つの質問の答えから共通キーワードを見つける
⑤「生きがい」を見つけて言語化する
早速自己紹介が始まりました。「ご年齢は?」「出身地は?」「何社目ですか?」「前職ではどんなお仕事をなさっていましたか?」「どうして転職なさったのですか?」「休日はどうやって過ごしていますか?」「ハマっていることはありますか?」「これからの人生でやってみたいことは?」固かった空気がほぐれていきます。
IKIGAImandala™の作成が始まりました。プリントされたワークシートに、社会人の方が思いつく言葉を書き込んでいきます。言葉に詰まったらファシリテーション役の学生が助け舟を出し、進めていきます。

学生「答えはこれ!とひとつに決め切れるなら簡単ですが、決めきれなくてもとりあえず書き出していきましょう」
社会人「(「稼げること」の質問に対して)好きでもないし得意でもないのに稼げてしまうこともありますね…得意なことと稼げることは近しい気がします」
学生「(「好きなこと」の質問に対して)以前好きだった、ということも大切です」
社会人「好きなことと喜ばれることの違いがわかりにくいですね…」
社会人「(「得意なこと」の質問に対して)大体なんでもそつなくこなせてしまうので、器用貧乏かもしれません」
学生「オールマイティというのは良いことなのではないでしょうか」
学生「場を温めることなどを積極的になさったりしますか?」
社会人「会議など誰も喋らない時に自分から話し出すことは多いです」
学生「場の温め要員ってすごく大切だと思います。それが苦にならずにできる「得意なこと」かもしれませんね」
学生「ご自分にとってありのままで働けるとはどんな状態かを考えてみるのもいいかもしれません」
社会人「気を遣う必要がないのに受け入れられている状態で働けるのが理想で、その状態で働けているなあと感じます。元々バランス感覚に長けているのかもしれません。」
言語化が進みワークシートが埋まっていきます。4つの輪の中央へ、キーワードが浮かび上がってきました。IKIGAIの言語化の瞬間です。
3. 世代を超えて「生きがい」は働くこと生きることの軸
IKIGAImandala™セッションを終えて、全員で感想や気づきを共有しました。初めてセッションを経験したコクヨマーケティングの3名からは、今日のこの時間を充実して過ごした様子が語られました。

・他者目線で思考するのが面白かったし新鮮だった
・自分はこういう人間だったのかという気づきがあった
・日を変えてもう一度やるとまた違うキーワードや気づきが得られそうだと思った
・言葉がなかなか出てこなかった。もっと時間をかけて取り組んでみたい
・勉強になった。今後に活かしていきたい
・社会人は業務に追われて自己分析をする時間を持ちにくい。貴重な良い時間だった
続いて、「セッションで得られた「働く意味」や「働く上での生きがい」とは?」という問いには、興味深い回答が続きました。
・転職したばかりなので、好きなことや得意なことはすぐに答えられたが、他の質問が難しかった。
・答えにくいなと思ったところから答えを捻り出すのがめちゃくちゃ難しかったが、学生さんのフォローが素晴らしく、上手に導き出してくれた。
・これまでも興味を持って続けてきた環境保護活動が、IKIGAIとして真ん中に浮かび上がった。やはりという思いがあり続けていきたい。
・営業という仕事柄もあるかもしれないが、自分にとって「働く」とは「他者とつながる」ことだと気づけた
・4つの質問への答えから、属しているコミュニティ内の雰囲気を掴み、より良くしていくことが自分にとっての生きがいだと再認識できた
日々を業務に追われる社会人にとって、今日のセッションは個人的な働きがいや生きがいが社会とつながっていることを実感する時間となった様子でした。

一方で、就活や働くことへの不安を抱えながらセッションを導いた学生たちにとっては、社会人が実際に社会とつながっていること、つながりを意識したことによってより深い生きがいを感じている様子を見て、社会に踏み出す不安が和らいでいく時間だったようです。
学生と社会人という異なる世代が、IKIGAIを真ん中にコネクトし、それぞれに充実感と希望を見出した一日となりました。
取材後記

今回のワークショップで最も心を動かされたのは、学生たちの「問い」が持つ力でした。
「就活が不安」という彼らの率直な言葉は、私たち大人が忘れかけていた「働くことの原点」を鋭く突いていました。そして、それに応えようとするコクヨマーケティングの皆さんが、役職や年齢を脱ぎ捨ててひとりの人間として「生きがい」を語る姿は、非常に美しいものでした。
IKIGAIとは、どこか遠くにある理想郷ではなく、日々の仕事の中にある「つながり」や「感謝」の中に既に存在している。しかし、忙しい日常の中ではそれが見えなくなってしまうことがあります。 今回のように、あえて立ち止まり、世代を超えて対話する「場」を持つこと。それこそが、組織の中に眠る95%の情熱を呼び覚ます鍵になると感じました。
【企業データ】
会社名:コクヨマーケティング株式会社
事業内容:オフィス空間構築、オフィス用品通販、働き方改革コンサルティング
所在地:〒100-6018 東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング18階
資本金:530百万円
従業員数:899名