「お互い様」が育む安心の居場所。人とつながる喜びが力になる働き方(株式会社セクテック)
仕事を通じて人と出会い、支え合い、人生の知恵を学ぶ。そんな「人とのつながり」の中に、働きがいの原石はあるのかもしれません。岐阜県多治見市に拠点を置く株式会社セクテックには、まるで家族のように温かい眼差しで社員一人ひとりの人生に寄り添う文化が根付いています。子育て、介護といったライフステージの変化も「お互い様」と受け止め、支え合う職場で、彼女たちは何を見つけ、どんな働きがいを育んでいるのでしょうか。二人の女性の物語から、働くことの意味を、あらためて問い直します。

株式会社セクテック:左から順に 矢野 明子さん( 総務グループ 広報課 係長)、加藤 三喜さん(総務グループ 広報課)
1.導かれるように、この場所へ。それぞれの入社の物語
――まず、お二人がセクテックさんに入社された経緯について教えていただけますでしょうか。矢野さんは入社5年目と伺いました。
矢野 明子さん(以下、矢野さん):はい、5年目になりました。入社のきっかけは、親が高齢になってきて、防犯面が心配になったことでした。私は日中、家を空けていますから。防犯がしっかりしている街は安全だという素人考えですけど、何の知識もないよりは、会社に入って知識を得て、少しでも家族や地域の役に立てればいいなと思ったんです。
――前職も同じような業界だったのですか?
矢野さん:いえ、全く違います。結婚してからは20年以上ずっと経理をやっていました。ただ、前の職場は休みがほとんどなく、夜も8時、9時まで働くのが当たり前で。連続勤務も珍しくありませんでした。年齢的なことを考えると、この働き方を定年まで続けられるかと考えた時に、少し無理があるなと感じて転職を決意したんです。

――加藤さんは入社10年目だそうですね。どのようなきっかけだったのでしょうか。
加藤 三喜さん(以下、加藤さん):10年前に今の社長に声をかけていただいたのがきっかけです。当時は母子家庭で、子どもを一人で育てていかなければいけないという想いが強かったので、とにかくしっかり働かなきゃ、と。防犯の仕事は全くの未経験でしたし、「私で大丈夫かな」という不安はありましたが、入社を決めました。
――最初はパートから始められたと伺いました。
加藤さん:はい。始めはパートからでしたが、だんだんと認めていただけるようになり、営業部に入りました。営業の仕事はストレスもありましたが、意外と自分に合っていたのかもしれません。ここまで続けてこられたのは、社長だけでなく、周りの先輩方の支えがあったから。本当に人に恵まれたなと思います。
2.社長から受け継ぐ他者への尊重
――入社してみて、会社の雰囲気はいかがでしたか?
加藤さん:入社してから、社長や先輩方に生き方についてたくさんのことを教えてもらいました。辛いことももちろんありますが、自分が生きていく上で、すごく勉強になる職場だなと感じています。だから、これから何があってもやっていけるだろうなって。この会社に入って本当に良かったと思います。
――特に印象に残っている教えはありますか?
加藤さん:社長からは昔から「何があっても『これで良かった』と思いなさい」と教わっています。何か失敗したり、理不尽なことがあったりしても、そこで終わりじゃない。そのおかげで強くなれたし、対応できる力が養われたんだと思えるようになりました。

――マイナスをプラスに捉える、素晴らしい教えですね。矢野さんはいかがですか?
矢野さん:私も入社して一番驚いたのが、社長が社員を人前で怒るところを見たことがない、ということです。どこの会社でも、何か失敗したら社長に怒られるじゃないですか。でも、ここでは見たことがない。社員一人ひとりのプライドをきちんと立てて、注意すべきことは別の場所で伝えているんだと思います。だから、社員も一人の人間として尊重されていると感じられるんです。
加藤さん:本当にそうです。上から押さえつけるのではなくて、同じ目線で話をしてくれます。
――社長のその懐の深さが、社員の皆さんが自立的に動ける社風を作っているのかもしれませんね。
矢野さん:そう思います。会社の理念は「感謝を超えた感動のサービスを提供する」ことですが、そのために具体的にどうするかは社員一人ひとりに委ねられています。だからこそ、自分たちで考えて、働きやすい環境も、お客様への感動も、作っていけるのだと思います。
3.子育ても介護も支える「お互い様」精神
――加藤さんは産休・育休を経て、営業から内勤になられたそうですね。働きやすさの面で変化はありましたか?
加藤さん:私が10年前に入社した頃と比べたら、もう格段に働きやすくなっています。社長の考え方も、社員の声を聞いてどんどん会社を良くしていこうという方向に変わってきました。今は時短勤務で、自分の生活リズムに合った働き方ができてありがたいです。
――子育てをしながら働くことへの理解が深い職場なのですね。
加藤さん:はい。子どもが熱を出した時など、どうしても休まなければいけない時でも、嫌な顔一つせず「しょうがないよ」と言ってくれます。以前は子どもを職場に連れてきて仕事をしたこともありますし、本当に助かっています。

矢野さん:ここにいる社員のほとんどが子育てを経験しているので、その大変さが分かるんです。私も介護を経験しているので、お互い様だと思っています。私も2年前まで両親2人を在宅で介護していて、父は昨年、自宅で看取りました。母も突然倒れて、もう働きに来れないかもしれないと会社に伝えたら、「会社の装置(緊急通報システム)があるから、それをつけて来ればいい。何かあったら信号が来て走ればいいから」と言ってくれて。ここまで理解してくれる会社はなかなかないと思います。
――それは本当に心強いですね。会社のサポートがあったからこそ、介護と仕事を両立できたのですね。
矢野さん:はい。私たちくらいの年齢になると、親の介護がいつ始まるか分かりませんから。そういう時に安心して働き続けられる環境があるのは、本当にありがたいです。まさに「お互い様」の精神ですね。
4.つながりが生む、わたしたちの働きがい
――ありがとうございます。では最後に、お二人の「働きがい」について教えてください。
加藤さん:もちろん仕事にやりがいを持つことは大事ですが、私はこの職場が楽しい雰囲気で、「ここに行きたいな」と思えることがモチベーションになっています。仕事をしに来るというより、いろんな人の知恵をもらいに来る、という感覚に近いかもしれません。
――知恵をもらいに来る、ですか。
加藤さん:はい。職場には人生の先輩がたくさんいるので、家では相談できないようなことを聞いてもらったり、アドバイスをもらったりするんです。ここで教えてもらったことを、また別の場所で活かすことができる。私はそうやって「つながり」を大事にしているのかなと思います。そこに働きがいを感じますね。

――人とのつながりが、加藤さんのエネルギーになっているのですね。矢野さんはいかがですか?
矢野さん:私も元々接客業をやっていたくらい、人と会話するのが好きなんです。今、コール代行の仕事で1日に何十件もお客さんと電話でお話しするのですが、全然苦にならない。むしろ「半年ぶりですね」なんて言いながら世間話で盛り上がったりして、楽しいです。
――矢野さんは健康経営の推進もゼロから立ち上げられました。そこにも働きがいを感じるのでは?
矢野さん:そうですね。「続けられることしかやらない」と決めて地道にやってきたことが、今では年間休日125日以上という形になったり、社員の皆に浸透してきたりしているのを見ると、やってきて良かったなと思います。これからも、社員の年齢構成に合わせた健康経営を進めていきたいです。
――お二人の働きがいが、会社の働きやすさそのものを作っているように感じます。
矢野さん:そうだと嬉しいです。デイキャンプのようなイベントを通じて、普段は話さない人とも打ち解けることで、業務でのコミュニケーションも円滑になります。社員一人ひとりが生き生きと働くことが、会社の力になる。それを実感できるのが、この仕事の面白いところですね。
取材後記

矢野さんは「人を支え、育む」ことに、加藤さんは「人とつながり、学ぶ」ことに、それぞれの働きがいを見出していらっしゃいました。その根底にあるのは、社長の「何があっても、これで良かった」という、すべてを受け入れる温かい哲学です。
会社という「場」が、子育てや介護といった個人の人生の変化を丸ごと受け止め、「お互い様」の精神で支え合う。だから社員は安心して、自分の役割に没頭できます。そして、仕事を通じて人と深く関わり、人生の知恵を交換し合う中で、働くことは生きる喜びに変わっていきます。
自分の人生を豊かにするために、仕事という舞台で人とつながり、学び、支え合う。そんな働き方の中にこそ、自分らしいIKIGAIを実現する確かな道があることを、お二人の生き生きとした姿が教えてくれました。
【企業データ】
会社名:株式会社セクテック
事業内容:セキュリティシステム、防犯カメラ、機械警備、貴重品運送業、AEDのレンタル・販売、パッケージコール代行
所在地:〒507-0054 岐阜県多治見市若松町4丁目37番地1
資本金:20百万円
従業員数:23名