「社員=仲間」と見立てる、岐阜県中津川発!ダイバーシティな職場とは?(株式会社NITTAN恵那金属)
1946年に創業し、今年で79年目を迎える金属加工会社のNITTAN恵那金属は、昨年10月に東証スタンダード上場の株式会社NITTANの子会社となり、新たなスタートを切りました。
同社は、長年の技術に加え、「社員への貢献」を最重要視する企業理念のもと、健康経営やダイバーシティーを推進しています。2代目・3代目社長の病による早逝や、現社長自身の経験から、社員が心身ともに健康で、自身の「働きがい」や「生きがい」を見出し、幸せを実感できることが、企業の成長と持続的な発展に繋がるという強い信念を持っています。
その実現のために人間ドックの推奨、ヘルスケア休暇制度の導入、外国人社員の活躍支援、多様な働き方を支援する就業規則の見直しなど、多岐にわたる具体的な取り組みを実施し、社員の幸せの実現に本気で取り組んでいます。
本インタビューでは、社員の働きがいや生きがいを重視する理由、また社員の幸せの実現のための具体的な取り組みについて詳しくお話をお伺いしました。
株式会社NITTAN恵那金属:左から順に 柘植 康弘さん(総務部次長)、市岡 真二さん(代表取締役)
1. 創業79年の歴史と新たな出発
―― まずはじめに、NITTAN恵那金属さんの事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
市岡真二さん(以下、市岡さん): 当社は1946年に創業し、今年で79年目を迎える金属加工会社です。主な事業は機械加工と表面処理で、お客様の多様なニーズにお応えできるよう、長年にわたり技術とノウハウを培ってきました。
―― 79年という歴史は大変重みがありますね。具体的にはどのような製品を手掛けられているのですか?
市岡さん: 精密な部品加工から、製品の耐久性や美しさを高めるための表面処理まで、一貫して手掛けることができるのが当社の強みです。自動車部品や産業機械部品など、多岐にわたる分野の製品に私たちの技術が活かされています。
―― なるほど、日本のものづくりを根底で支えているのですね。御社は中国にも子会社があると聞きました。グローバル展開もされているのですね。
市岡さん: はい、中国には子会社があり、グローバルな視点での事業展開も進めています。海外のお客様からのご要望にも対応できるよう、体制を整えています。
昨年大きな転機があり、10月に東証スタンダード上場の株式会社NITTANの子会社となり、今年1月には株式会社NITTAN恵那金属へと社名変更いたしました。これは当社にとって、新たな大きな一歩だと捉えています。

―― どのような経緯でNITTANグループの一員となったのでしょうか?
市岡さん: 先ず、2018年に創業家からファンドへ株式が譲渡された経緯があります。その後、ファンドと共に6年間、コロナ禍という逆風の中で企業価値向上に取り組んできました。ここでの活動の成果もあり、当社の技術力と成長性を高く評価していただき、昨年、NITTANグループの一員となることができました。
上場企業の子会社となったことで、これまで培ってきた技術力、管理力をさらに磨き上げるとともに、グループ間のネットワークを活用した営業活動で、より大きなスケールで地域社会、そして日本のものづくりに貢献していきたいと考えております。
―― 従業員数や、構成についても教えてください。
柘植 康弘さん(以下、柘植さん): 現在、従業員は106名です。そのうち約30%が外国籍の社員で、約20%が女性です。特に女性の役職者の比率が高いのが当社の特徴の一つだと考えています。多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる職場を目指しています。
2. 「社員=仲間」を軸にした企業理念と柔軟な働き方への挑戦
―― 御社の企業理念について、特に「社員への貢献」を最も重視されている点、そして「社員」を「仲間」と読み替えるというお話が非常に印象的です。この点について、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
市岡さん: はい、当社の企業理念は「社員への貢献」「取引先への貢献」「社会への貢献」の三つを掲げています。この中で、私たちが最も重視しているのが、最初に掲げる「社員」です。
と言うのも、企業を支えているのは、間違いなく社員一人ひとりだからです。社員がいて初めて、お客様に価値を提供でき、社会に貢献できると考えています。彼らが会社を支える最も大切な基盤であり、原動力だと考えているからです。
―― その「社員」を「仲間」と読み替えるというのは、どのような思いからなのですか?
市岡さん: 「社員」という言葉は、時に労使関係のような、少し硬い、上下関係を意識させるような印象を与えてしまうことがあります。しかし、私たちは、共に働く従業員を単なる労働力としてではなく、同じ目標に向かって共に歩む「仲間」として捉えたいという強い思いがあります。この大切な仲間がいきいきと働ける環境を実現することこそが、会社の持続的な成長に繋がると信じています。
―― 「仲間」がいきいきと働ける環境を実現するために、具体的にどのような取り組みをされていますか?
柘植さん: 私たちは、まず「仲間」の声に耳を傾けることを最も重要視しています。彼らが何を求めているのか、どのような働き方を望んでいるのかを正確に把握するため、社内アンケートなどを定期的に実施しています。

――アンケートで得られた声をどのように経営に活かしているのですか?
柘植さん: アンケート結果や「仲間」からの意見は、社内ルールの見直しや新たな制度の導入に直結させています。例えば、ある年には就業規則を1年間で6回も改定したことがありました。
――1年間で6回ですか!それは驚きです。そこまで頻繁に改定するというのは、柔軟性への強いこだわりを感じますね。
市岡さん: はい、それは当社の大きな特徴の一つだと思います。時代とともに変化する働き方や価値観に、会社側が柔軟に対応していく必要があると考えています。硬直したルールでは、多様な「仲間」のニーズに応えることはできないと考えています。
3. 従業員の健康と幸福を最優先に
――健康経営を重視するようになったきっかけは何だったのですか?
市岡さん: 当社の歴史を振り返ると、2代目社長と3代目社長が、いずれも病により若くして亡くなるという悲しい経験がありました。特に2代目社長は、がんの発見が遅れたことを非常に悔やまれており、その言葉は今も私の心に強く残っています。
―― それは大変お辛い経験でしたね。社長ご自身も、健康に関するご経験があると伺っています。
市岡さん: ええ、私自身も人間ドックで、放置すれば悪性化する可能性のあるポリープが見つかり、除去した経験があります。これらの経験が、従業員の健康管理に対する意識を非常に高めるきっかけとなりました。

―― そのような経験から、具体的な制度や取り組みに繋がっていったのですね。
市岡さん: はい。これをきっかけに、全社朝礼で人間ドックの重要性について繰り返し話し、従業員に受診を強く推奨しています。さらに、人間ドックを受診しやすいように、ヘルスケア休暇制度も新たに設けました。
―― ヘルスケア休暇制度は素晴らしいですね。実際に、この取り組みによって成果は出ていますか?
市岡さん: 実際に、人間ドックで早期のがんが発見され、完治した社員も複数います。この取り組みの重要性を日々実感していますし、今後も継続していきたいと考えています。
―― 健康診断の結果に対するフォローアップもされているのですか?
柘植さん: はい。健康診断でD判定を受けた社員には、病院での再検査を促し、その後の結果の報告があるまで、総務部が責任を持ってフォローアップを行っています。早期発見・早期治療に繋げることが従業員の健康を守る上で非常に大切だと考えています。
4.多様な人材が「いきいきと働ける環境」の創造
―― 御社が多様な人材の活躍を重視される背景についてお聞かせください。
市岡さん:日本の少子高齢化は深刻で、この地域でも働き手の確保は年々厳しくなっています。正直なところ、日本人社員だけでは、事業を安定的に継続していくことが困難な状況です。約3割が外国籍の社員なのですが、当社にとって、外国人社員はもはや不可欠な存在です。彼らがいなければ、今の生産体制を維持することはできません。単なる労働力としてではなく、当社の重要な「仲間」として共に働いています。
―― 外国人社員の採用は、単なる人材確保に留まらないとお考えなのですね。
市岡さん: ええ、まさにその通りです。私たちは、単に人手を補うためだけに外国人社員を採用しているわけではありません。私たちの目標は、多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりが「いきいきと働ける環境」を創ることです。
―― 外国人社員だけでなく、女性の活躍にも力を入れられているのですね。
柘植さん: はい、女性社員も当社の重要な戦力です。女性の役職者比率が高いのも当社の特徴ですが、育児と仕事の両立支援など、女性がキャリアを築きやすい環境づくりにも力を入れています。少子高齢化が進む中、外国人だけでなく、女性の活躍もまた不可欠だと考えています。そのために就業規則の見直しも行いました。
―― 具体的にはどのような見直しをされたのですか?
柘植さん: 具体的には、就業時間の繰り上げ・繰り下げや、時短勤務の対象範囲の拡大を実施しました。現在では、小学校3年生までの子を持つ社員に時短勤務を認めています。個々の状況に応じて柔軟に対応できる体制を整え、社員が安心して長く働き続けられる環境を提供したいと考えています。
5.課題を乗り越え、「働きたい」と思える職場へ
―― 社員を「仲間」と捉え、健康経営や多様な働き方を推進されている御社ですが、経営における課題と、今後のアプローチについてお聞かせください。
市岡さん: ワーク・ライフ・バランスの実現や、多様な働き方と生産性の両立を図る中で、さまざまな価値観が存在するため、どちらか一方を重視すれば他方が損なわれるといった状況に陥りかねず、そのバランス調整の難しさを痛感しています。
―― 確かに、多様な働き方を許容すればするほど、個々の要望に応える難しさや、業務の効率化との両立は課題になりそうですね。
市岡さん: まさにその通りです。これらを実現していくためには、経営層や幹部社員の考え方のシフトチェンジも求められます。トップダウンだけでなく、現場の声を吸い上げ、柔軟に意思決定していく必要があります。

―― その打開策として、何か具体的な取り組みはされていますか?
市岡さん: その打開策の一つとして、当社では「ダイバーシティ&インクルージョン」を意識した組織づくりに取り組んでいます。多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるような環境を目指しています。
―― 幹部社員の構成も多様化されていると聞きました。
市岡さん: はい。幹部社員は30代前半から60代まで幅広い世代が在籍し、外国人社員も含まれています。様々なバックグラウンドを持つメンバーが議論することで、より多角的な視点から物事を捉え、良い意思決定ができると考えています。
―― 人事評価においても、多様性を重視されているのでしょうか?
市岡さん: その通りです。当社の人事評価では、年齢、性別、国籍、学歴、社歴などにとらわれない公正な評価を行うよう努めています。個人の能力や実績を正当に評価し、成長を支援する仕組みを構築しています。
―― 最後に、NITTAN恵那金属が目指す今後の姿についてお聞かせください。
市岡さん: 今後も「仲間」の声に真摯に耳を傾け、「NITTAN恵那金属で働きたい」「NITTAN恵那金属で働いてよかった」と心から思ってもらえるような職場づくりに、全社一丸となって取り組んでいきたいと考えています。
社員のエンゲージメントが高まり、いきいきと働ける環境が整うことが、私たちの成長の原動力となり、ひいては地域社会への貢献にも繋がると信じています。これからも「仲間」と共に、NITTAN恵那金属をより良い会社にしていきたいと思います。
取材後記

NITTAN恵那金属さんでは少子高齢化が進む中、健康経営は単なる福利厚生としての健康経営ではなく、社員が働きがいやIKIGAIを感じるための重要な手段と位置づけられています。人間ドック推奨やヘルスケア休暇制度導入など、社員の健康を真摯に守る姿勢は、会社の持続的成長への強い意志を感じました。
さらに、外国人や女性の活躍は不可欠であるという認識のもと、「多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりが、いきいきと働ける環境を創る」という目標に向かっています。柔軟な就業規則やダイバーシティ&インクルージョンを意識した組織づくりはその取り組みの一環であり、これらの目標に向かう姿は、まさにIKIGAI経営を実践されている証ですね。
【企業データ】
会社名:株式会社 NITTAN恵那金属
事業内容:機械加工、表面処理、不動産賃貸
所在地:〒508-0023 岐阜県中津川市小川町2番18号
資本金:100百万円
従業員数:161名(国内:106名、海外:55名)