【イベントレポート】背番号10はなぜ職場で輝くのか──二足のわらじが照らす「働きがい」
2026年5月、一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会主催、毎月第三水曜日12:00〜開催の『IKIGAIパートナー企画第7弾!オンラインウェビナー』が開催されました。登壇したのは、食品製造業(缶入り清涼飲料水のOEMと「政之助商店」ブランドでの調味料の開発製造販売)を行う楠原壜罐詰工業株式会社で働きながら、なでしこリーグ2部・ディアヴォロッソ広島のフォワードとして戦う濱田紗妃さん。サッカーと仕事、二足のわらじを履く社会人3年目の言葉から、「どんな環境でも働きがいを見つける方法はあるのか」という問いに、参加者とともに向き合う時間となりました。

ゲストスピーカー:濱田 紗妃さん(楠原壜罐詰工業株式会社/ディアヴォロッソ広島 所属)
飛び入り登壇:楠原 千津恵さん(楠原壜罐詰工業株式会社 取締役)
ファシリテーター:熊倉 利和(一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会 代表理事)
司会:渡辺 由美子(一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会 理事)
1. 「何の会社か知らなかった」──偶然から始まった入社
ウェビナーは、協会の紹介から始まりました。健康経営による「働きやすさ」の普及啓発に約10年携わってきた熊倉代表理事は、「働きやすさが整ったら、今度は働きがいを充実させたい。その働きがいが、5年10年勤めていく中で生きがいに繋がったらいい」と、協会設立の想いを語ります。
濱田 紗妃さん(以下、濱田さん)が画面に登場すると、思いがけない光景が広がりました。楠原壜罐詰工業の社長や取締役、社員の皆さんが次々と画面をオンにし、手を振って彼女を応援し始めたのです。「本当に素敵な職場にいらっしゃるんだなということが伝わりました」と熊倉氏。昼休みのオンライン会場が、一気に温かい空気に包まれました。
濱田さんの入社の経緯は、少し変わっています。大学4年の終わり、なでしこリーグ2部のディアヴォロッソ広島への加入が決まったものの、アマチュアチームのため働きながらプレーする必要がありました。チームスタッフと会社の繋がりから、卒業のおよそ1ヶ月前に初めてWebで面談し、そのまま4月1日に入社。「何をされている会社か、正直知らなくて」と濱田さんは振り返ります。「自分の中ではサッカーが一番大きな軸。その軸を崩さないために働くことが大事、という立ち位置でした」

2. 駄目駄目だった1年目、土台が変えた2年目
現在の生活は、朝8時半から16時まで広島市の本社で勤務し、車で約1時間かけて熊野町の練習場へ。18時半から約2時間の練習後、自主練やシャワーを終えて帰宅すると22時。週末は広島でのホームゲームに加え、北は福島から南は山口まで、全国各地での試合が続きます。業務は銀行明細のチェック、吉田工場で製造する飲料の出荷確認、自社ブランド「政之助商店」の調味料の仕入・売上データの管理や請求書作成、そして毎朝9時のラジオ体操の号令まで。「忙しいですけど、楽しいですね。本当に」と濱田さんは笑います。
しかし、最初からうまくいったわけではありません。「最初はもう全く駄目駄目で。一生懸命やりたい気持ちはあったんですけど、やってみると、皆さんが思っている以上にできなくて」。1年目はサッカーの結果も伸び悩みました。「日常生活の土台が不安定だったこともあって、満足な成果はなかったと思います」
転機は2年目。受け身だった姿勢が、「自分ができるような仕事はありませんか」と自ら動く姿勢に変わりました。「若いからできることがあるんじゃないか。皆さんを助けたいなという気持ちが増えて」。仕事で引き出しが増えるとサッカーにも余裕が生まれ、昨季はチーム得点王に。今季からは背番号10を背負います。「ピッチでは、自分が点を取ればいいや、一番目立ちたいというのがあって。職場とは雰囲気が違うねってよく言われます」日常の土台と、勝負の場での強気。その両輪が回り始めた瞬間でした。
3. 「初めてのケース」を模索し続けた会社
セッションの途中、取締役の楠原千津恵氏が飛び入りで加わりました。「初めてのケースだったので、どういう働き方をしていただいたらいいのか、私たちもわからない。他の社員も納得してくれるのか、いろんなことを考えて、1年目は模索しながら支え続けました」。それでも、と千津恵氏は続けます。「だんだん、濱田のうちの会社での存在意義がわかってきて、彼女もそれがわかってきて。そうすると仕事もプレーもうまくいって、彼女が生きがいにしているサッカーが充実していったんです」

熊倉氏はこのやりとりを受けて、「同じ仲間を応援することに、皆さん誇りや絆を感じている。特別扱いに見えるのではという不安が、違う場所で役割を持つ仲間への誇りに変わっていった」と場の変化を言葉にしました。
4. 好奇心が、働きがいをつくる
「どんな環境でも働きがいを見つけるための、濱田さん流の方法とは」──熊倉氏の問いに、彼女はこう答えました。「働くことを楽しまないと、しんどくなるのは自分。何でもやってみるというのは大事にしていて、勝ち負けを生み出すのは自分だし、わからないものに挑戦したり、わからないことを見つける楽しさが、働きがいに繋がるのかなと思います。好奇心がやっぱり一番かなと」
参加者からはチャットで「サッカー選手として、社会人として活躍される姿は、いろんな人生の生き方としてあるのだと思います」という声が寄せられました。司会の渡辺氏は「自分ができることは何か、自分次第で見え方が変わる──そんなメッセージを届けてくださいました」と締めくくりました。
編集後記

画面いっぱいに、うちわを掲げて応援する社長の姿。イベントが終わっても、その光景が心に残っています。
「何のてらいもなく『私が役に立てることは何かしら』と言える若者は、応援したくなる」と熊倉氏が語ったように、濱田さんの言葉には飾りがありませんでした。何の会社か知らずに入った職場で、駄目駄目だった1年目を経て、それでも「若い自分だからできること」を探し始めた。その素直な一歩が、周囲の応援を呼び、応援がまた彼女の背中を押していく。
働きがいは、制度から生まれるのではなく、この循環の中で育つもの。応援し、応援される関係こそが「働きがい」の正体なのだと、確信した昼下がりでした。
2026.7月現在、試合中の怪我でチームを離脱。術後の回復に励む選手 濱田さん
2026.8月末から始まるリーグ後半戦より復帰予定!私たちは心から応援しております。
登壇企業・団体
会社名:楠原壜罐詰工業株式会社
事業内容:清涼飲料水のOEM製造(お茶・コーヒー・果汁など)、自社ブランド「政之助商店」による
調味料の開発・製造・販売
所在地:〒733-0012 広島県広島市西区中広町1-16-24
資本金:約14百万円
従業員数:49名
団体名:ディアヴォロッソ広島
概要:広島県を拠点とする女子サッカークラブ(なでしこリーグ2部所属)
登壇者:濱田 紗妃選手(FW・背番号10)
主催団体
会社名: 一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会
事業内容:IKIGAI経営の普及・推進、IKIGAIcanvas™️メソッドによる研修・ワークショップ、
法人コミュニティ「IKIGAIパートナー」の運営
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