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子育て世代の力を解き放つ「ありのまま」の経営(上村陶磁器株式会社)

陶磁器の産地、岐阜県美濃の地で、上村陶磁器は100年近い歴史を持つ企業です。同社は、業界の常識を覆す柔軟な働き方を実践し、長引く人手不足と複雑化する家庭環境の中で注目を集めています。経営者の上村さんは、制度や効率論を超え、働く人の想いや葛藤を尊重する「場のあり方」を大切にする経営哲学を持っています。自らの過去の経験から生まれた、人を大切にする文化が、いかにして会社の生産性を劇的に向上させたのか。その物語を紐解きます。

上村陶磁器株式会社:上村 紀子さん(専務取締役)

1. 岐阜県が描く「働いてもらい方」と経営者の原点

――貴社は岐阜県が推進する「働いてもらい方改革」の優良事例として注目されています。まず、岐阜県がこの「働いてもらい方」をテーマに掲げる背景について、上村さんの認識されているところから教えていただけますか。

上村 紀子さん(以下、上村さん):岐阜県は、働く人の不足率が全国的に見ても上位9位に入るほど深刻です。東海圏は基本的に有給休暇の取得率もずっと低く、労働力人口の確保が大きな課題となっています。今、専業主婦ではない方が70%ぐらいいる中で、その層をどうやって働き手として引き出すか、という点が行政の大きなテーマになっていると感じています。

――そうした状況の中で、貴社独自の多様な働き方への取り組みが生まれるに至った背景には、上村さんご自身のご経験が深く関わっているそうですね。

上村さん:はい。私は元々、病院で管理の仕事(管理栄養士)を17年ほどやっていました。当時は主人の父親たちがやっていた会社を、主人が東京から帰ってきて継ぐことになったのです。私自身は仕事に打ち込むあまり、4人の子どもを育てながら、最後の出産直前まで妊娠していることを周りに言えず、自分に「妊娠していないはずだ」と言い聞かせているような、非常にハードな働き方をしていました。子どもたちに十分向き合えなかったという、心の痛みがずっと残っていたのです。

―― 過去の葛藤が、今の多様な働き方を受け入れる姿勢につながっていると感じていらっしゃるのですね。

上村さん:ええ。10年前に事業を引き継いで社長になったものの、事業継承の苦しさもあり、思うような仕事ができず、大変な時期を経験しました。その頃、生産量が上がらないにもかかわらず、このままでは365日働かなければならないと危機感を持ちました。そこで、同業者に相談し、民間の応募サイトなどで「短時間でも働きたいお母さん」の募集を始められたのですね。

2. 働く母たちの「ありのまま」を受け入れた転換点

――最初に採用された短時間労働の方の条件が、非常にチャレンジングなものだったと伺っています。

上村さん:そうなんです。最初に面接に来てくださったお母さんは、自分のためにお金を使いたい、という明確な希望を持っておられました。そして「時間はこれだけしか働けません」「夏休み、春休み、冬休みはすべて休みます」という条件を提示されたのです。さらに、ご主人が「子育てをしっかりやってくれ」と言われている、子どもを野球に連れていくのが本当の喜びだとおっしゃいました。

――それは、経営者として受け入れるのにためらうような条件だったかもしれませんね。

上村さん:経営者としては「そうですか」と聞き流すか、断るべきだったのかもしれません。ですが、私自身が子どもたちと向き合えなかったという過去があるので、その「子育てをしっかりやりたい」という言葉を聞いた瞬間に、心が痛んでしまったのです。そして、社長と話し合い、「採用してみようか」とその気になってしまったのです。

――その後も、立て続けに採用されたお母さんたちの状況も、非常に個性的だったそうですが、どのような方が来られたのでしょうか。

上村さん:その1週間後ぐらいに面接に来てくださった2人目のお母さんは、まず「火曜日は休ませてください」と切り出しました。理由は、長男が大学に行けず、長女も高校を卒業できずに家にこもっているという、大変な状況で、「家にいたらこれ以上何が起こるか分からないから、私がいっぺん外へ出て暮らし方を変えたい」という、切実な勇気を持って来られた方でした。彼女は他の会社で3回も面接を断られていたのです。

私自身も病院にいた頃は、フルタイムで安定性の高い社員がベストだと思い続けてきました。しかし、この方たちに出会い、「この社会でそろそろ、どこが正しいかのベースを考える時が来ているのではないか」という思いが強くなりました。結果的に2人とも採用しました。言ってしまえば、世の中の縮図のような、一筋縄ではいかない状況の方々でした。

――そうした方々との出会いが、上村さんご自身の、従来の働き方に対する考え方が変わるきっかけになったのですね。

3. 5時間勤務がもたらした生産性向上の真実

――厳しい条件での採用は、経営にどのような変化をもたらしましたか。

上村さん:驚いたことに、生産効率が劇的に高まりました。特に最初のお母さんは、内職経験のおかげもあり、段取りが良く、その5時間で本当にすごい仕事量をこなしてくれたのです。

――売上や生産量でいうと、どれほどの変化があったのでしょうか。

上村さん:売上ベースで見ると1.1倍ちょっとの増加ですが、短時間勤務で休みが多いことを考えると、労働生産性はそれ以上に跳ね上がっています。この会社にとって、まるで「こんなお母さんたちがどこに眠っていたのだろう」と思うほどの出来事でした。

―― 短い時間の中で、なぜそこまで効率が上がるのだと思われますか。

上村さん:お母さんたちは、時間の使い方が本当に上手なのです。そして、私たちが意図的にしたことといえば、それぞれの方がどう仕事をしたいか、何が得意かだけを一生懸命見たことだけです。

――以前は、ルールとして教え込んでいた部分があったそうですが、どのように変化したのでしょうか。

上村さん:以前は、私はすべてルールとして教え込み、仕事の順番を決めて回していました。しかし、今のお母さんたちは、仕事を提案するととりあえずやってくれる。そして、その速度が早すぎて、結局全部できてしまうということが起こりました。そのお母さんたちが加わったことで、私の仕事が終わる時間も夜8時や9時から、今では5時に終わってしまうようになりました。

――短時間で働くお母さんたちが増えることで、上村さんご自身の働き方も劇的に変わったと感じていらっしゃるのですね。

上村さん:その後、さらに3人のお母さんが加わり、現在は短時間労働のお母さんたちが計5人います。私たちは、育児世代のお母さんたちには、朝「熱が出ました。休みます」というLINEが来たら、それを子どものための有給休暇としてすべて対応しています。

4. 育児から介護まで、多様な人生を支える場へ

―― 育児世代だけでなく、高齢者の方も積極的に受け入れられているとのことですが、どのような背景があるのでしょうか。

上村さん:はい。育児世代だけでなく、高齢者も積極的に受け入れています。現在82歳になる従業員は、65歳で採用されました。大病を患った後も、医師からリハビリが必要だと言われた際に、本人が「上村というリハビリができるところがあるのでそこへ行きます」と言って、リハビリを兼ねて週2回3時間、勤務を続けてくれています。

――介護施設ではなく、職場をリハビリの場として捉えるという視点を持っていらっしゃるのですね。

上村さん:私は、この陶器業界で長くお仕事をされた高齢の方がデイサービスに行くなら、「お金をもらえる陶器を扱うデイサービス」があってもいいのではないか、と考えてしまいました。特にこの地域は車がないと動けないため、定年退職後に社会に出てこなくなる男性が多いのを見てきました。陶器を扱う会社がなくなってしまったものは絶対に戻せないので、この産業を残すべきかと考えたとき、同業者の奥様は、「うちは、陶器卸だけでなく他の業種への変更も検討し商事会社にするわ」と話しています。しかし、この産業が必要である限り試行錯誤したいですね。

――陶磁器業界の不安定さに対し、多様な事業と多様な人材で乗り切ろうとされているのですね。

上村さん:はい。私たちの事業は、納期が厳しいOEM案件が95%を占めます。納期に間に合わせるための内製化(自社内で釜を持つなど)を進めた結果、短期納期の隙間が生まれました。この隙間に、時間を上手に使うお母さんたちがキュッと入ってきてくれたことで、売上を伸ばすことができたという側面もあります。

会社として成り立っていれば、例えば82歳でリハビリに来てくれているおじいちゃんにとって、デイサービスに行くよりもうちに来た方がいい、と思える場所になれるのです。私たちは、若手の経営者が「フレキシブルな会社って何だろう」と考えたときに、この陶磁器業界で一つの理想の形になれるのかどうか、まだ模索中です。上から目線ではなく、地域で暮らす多様な人々の人生を支える選択肢の一つになれれば良いなと思っています。

取材後記

「夏休みは全休みします」「火曜日は休ませてください」という異例の条件を、上村さんは受け入れました。それは、ご自身が過去に抱えた子育てとの葛藤と、働く母たちの「暮らし方を変えたい」という切実な願いを尊重した結果でした。そして、その決断が、短時間労働者による劇的な生産性向上という結果をもたらしました。

この上村陶磁器の取り組みは、まさにIKIGAI経営の核心を突いています。制度やルールといった「やり方」の前に、経営者の原体験に基づく「人を大切にしたい」という「あり方」がある。そして、そのあり方が、社員の持つ力と「ありのままの姿」を最大限に引き出す「場」をひらいたのです。光だけでなく、影も含めて受け入れることで、従業員が安心感の中で自分の能力を発揮できる。IKIGAI経営とは、完璧を求めず、プロセスと人の持つ力を信じ抜き、人が自ら幸せになっていける空気と関係をひらく営みなのだと、改めて確信しました。


【企業データ】
会社名:上村陶磁器株式会社
事業内容:陶磁器の製造、企画、卸売(OEM、業務用、自社企画品)
所在地:岐阜県多治見市上山町2-13-8
従業員数:13名(うち 短時間労働者5名、高齢従業員1名(82歳))
令和8年4月現在 高齢者82才の方は退職されました。
         60歳以上4名(短時間3名 親の介護あり、1名フルタイムパート
         50代  2名(時間短縮 1名透析患者)
         20代から50代子育てお母さん短時間 4名

監修者画像

【監修者】熊倉 利和

一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会 代表理事/IKIGAI WORKS株式会社 代表取締役/IKGAI広場 編集長

新卒であさひ銀行(現りそな銀行)に入行後、慶應義塾大学大学院(MBA)を経て、セルメスタに転職、2011年に代表取締役に就任。2021年、IKIGAI WORKS株式会社を設立。
健康経営伝道師として350社と750万人にデータヘルス計画や健康経営のコンサルティングを実施。生きがい・働きがいを持って経営を推進するトップランナーらとのインタビューや講演、イベント開催など健康経営や働きがいの普及啓発に取り組む。今では健康経営、ウェルビーイング、人的資本経営を包含し、「IKIGAI経営」の普及啓発へ公私ともに邁進。IKIGAIオタクとしてすべての社会に「生きがい」を広めることを生業とする。

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