【イベントレポート】「仕事」は生きがいになりうるのか──くまらぼ IKIGAI研究会・5月の夜の対話
若葉が眩しく、時折夏の気配がのぞく5月の夜。「仕事が生きがいだなんて、なかなか思えない人もいますよね」——月に一度、オンラインに集う「くまらぼ IKIGAI研究会」。この夜のテーマは、「仕事は、生きがいになりうるのか」でした。答えを急がず、それぞれの経験を持ち寄る。ちょっと不思議で、けれど温かな対話の場を、のぞいてみます。
1. 「夏が来る前に」──自分への約束から
対話の始まりは、恒例の自己紹介から。この月のお題は「夏が来る前に、これだけは、と心に決めていること」でした。「大切な人生の節目までに、自分を整えたい」と減量を掲げる人。「習慣を手放すと、衰えるのが早いんです」と、腕立てと懸垂を日課にすると宣言する人。陶芸や江戸切子など「手作り」の喜びを語る人もいれば、6月の本番へ吹奏楽の練習に打ち込む人も。
みんなから「パパ」と慕われる代表理事の熊倉利和さんは、「夏までには必ず出す」と、執筆中の書籍への決意を口にしました。「書き進めるほどにテーマが深まって、何度も章立てを見直している。難産です」。肩書きを脇に置いた近況が、場の空気をやわらかくほぐしていきます。
2. 「仕事が生きがいにならない」という景色
場が温まると、本題へ。まず、ある参加者が、いま関わっている相談者とのエピソードを共有してくれました。その方は、日々の暮らしや支払いに追われ、未来を描く余裕を失っている。「生きがいなんて見えない」という切実な声に、支援する側として何ができるのか。その参加者は葛藤しながらも、あるまなざしを手放しませんでした。
「相手の可能性を見るのを、やめない」。「相手は偉大な存在だ」という一点を信じ、時間をかけて対話を重ねる。目先の状況ではなく、その人の奥にある可能性に目を向け続ける。その姿は、仕事が業務を超えて、誰かの人生に深く関わる「生きがい」へと変わっていく瞬間を、見せてくれました。
3. 夢中と、雑務の中に眠る「得意」
続いて、別の参加者が自身の過去を振り返ります。20代の派遣社員時代、「言われたことしか、やらなかった」。当時の自分に今なら何と声をかけるか——「何か一つでいいから、夢中になれることを学んでみて、と言いますね」。その後、ふとしたきっかけでコーディングの面白さにのめり込み、時間を忘れて没頭した経験が、今の仕事への情熱につながっています。「やってみないと分からない。違ったら、次に行けばいい」。
また別の参加者は、「新人時代の雑務」が今の自分を作っていると語りました。書庫の整理や、備品の発注。単調に見える仕事の中で、「どうすれば周りが喜ぶか」と先を読み、気を回した経験が、今の「得意」と「生きがい」の土台になったといいます。「人の役に立つ実感が、自分の得意を見つける瞬間だった」。どんな小さな仕事にも、種は隠れているのです。

4. 「諦め」の裏側にある熱を、聞く
対話が深まる中、”パパ”こと代表理事の熊倉利和さんが、独自の視点を投げかけました。「仕事に期待していない、つまらない、と口にする人がいたら、その裏側を聞いてみたい」。「期待していない」という言葉は、かつて何かを「諦めた」結果であることが多い、とパパは言います。
なぜ、いつから諦めたのか。掘り下げていくと、そこには「本当はこうありたかった」という願いや、裏切られたと感じるほどの熱が隠れている。「つらい、ということは、その人なりに頑張っている証でもある」。表面の諦めやつらさの奥にある熱源に、もう一度触れられたら。相手を批判的に見るのではなく、共感を持って、その人の歴史に耳を傾ける。そんな関わり方でした。
5. AI時代だからこそ際立つ、人間の「見立て」
ある参加者は、AIと仕事の価値へと話を広げました。自動化が進む中で、人がやるべき仕事とは何か。こんな話があります——どんなに汚れた灰皿でも、ピカピカに磨き上げることに喜びを感じる人がいる。その人にとって掃除は、単なる作業ではなく、生きがいそのもの。機械が掃除するのと、人が心を込めて磨くのとでは、受け手が感じる価値がまったく違う。
「気持ちにゆとりがあって、物事を見立てる余裕があれば、どんな仕事も生きがいになりうる」。AIが多くを肩代わりするこれからの時代こそ、人が物事にどんな価値を見出し、どんな心で向き合うかという「まなざし」の力が、いっそう際立つのかもしれません。
6. 新しい環境へ、飛び込む
最後に、若いメンバーの一人が、「環境を変えること」を語りました。今の仕事がどうしても生きがいと思えないなら、一度そこを離れ、新しい環境に飛び込むのも一つの手だ、と。
かつて抱いた夢を胸に、海を渡って留学した経験があるといいます。現地で世界のレベルに圧倒され、現実を思い知らされることもありましたが、その過程で「本当に大切にしたいこと」を再発見した。かつて抱いた夢をそのままの形で叶えることだけが正解ではなく、経験を通じて、夢を「更新」していく。「新しい環境に自分を置いたとき、自分はどう振る舞うのか。それを見てみたい」。未知への好奇心が、停滞を打ち破る原動力になっていました。会の終わりには、次への案内もありました。
今夏、IKIGAI WORKSではAIの知見を半年でじっくり伝える講座が始まり、来月の研究会は、法人コミュニティ「生きがいパートナー」との初のコラボレーション企画を予定しているとのこと。締めくくりに、ファシリテーターの”ゆみちゃん”こと渡辺由美子さんが、アンパンマンの歌詞になぞらえて場を結びました。「何のために生まれて、何をして生きるのか?」と、自分が生きる意味を思い出せれば、困難に見えることも、きっと乗り越えていける。そんな願いとともに、対話は静かな余韻の中で幕を閉じました。
編集後記
「仕事は生きがいか」という、ともすれば二元論に陥りがちな問いに、この夜は驚くほど多彩な答えが返ってきました。誰かの可能性を信じ抜くこと、小さな雑務に喜びを見出すこと、環境を変える勇気を持つこと。
そのすべてに共通していたのは、現実をどう捉えるかという「まなざしの力」でした。答えを急いで一つの教訓にまとめるのではなく、互いの経験を、そのまま大切に受け取る。その場の空気そのものが、参加者の生きがいの土壌になっている。そんな温かさを感じる夜でした。
IKIGAI探求サークル「くまらぼ」
月に一度、オンラインで開かれる、生きがいについての問いを持ち寄る学びの場です。答えを教わるのではなく、参加者それぞれが自分の経験から問いを深めていきます。
主催:一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会
開催:月1回・オンライン
※参加方法などの詳細は、一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会まで。
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