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【イベントレポート】来場者数、3,500人の大盛況。奈良の運送会社が「大和フェス」で掴んだ、誇りと主体性の物語

2025年11月、奈良県田原本町にある唐古鍵遺跡史跡公園の敷地内は、かつてない熱気に包まれていた。開催されたのは「大和(YAMATO)フェス」。 一昨年、地域貢献の一環として始まった「TAWARAMOTO交通安全フェスタ」は、今年、名称も規模も大きく姿を変えた。来場者数は昨年の約500名から7倍となる3,500名へ。30を超えるキッチンカーや企業ブースが出店し、地域住民の笑顔が溢れた。
しかし、このフェスの真の成果は、数字だけではない。運営を担った社員たち(ハンナアカデミー生)の中に生まれた、「やらされる仕事」から「自分たちで創る仕事」への意識変容にあった。イベント後の振り返りミーティングから、その軌跡を追った。

株式会社ハンナ:西岡 徳行さん(取締役)  

1. お試しイベントから本気の挑戦へ!地域企業の可能性を求めた先に見たもの

「正直、前回の交通安全フェスタは『お試し』でした。行政の支援を受けるためにテーマを絞り、言わば『やらなくてはいけない枠組み』の中で開催したものでした」

振り返りミーティングの冒頭、取締役の西岡 徳行さんはそう切り出した。 一昨年開催された「交通安全フェスタ」は、雨天という不運もあり、来場者は数百名。地域交流としては一定の成果を上げたものの、西岡さんの中にはある想いがくすぶっていたという。

「運送会社だから交通安全、という枠を超えたかったんです。『ハンナ』という企業そのものを地域の方々に知っていただきたい。そして何より、社員が『自分たちの会社はこんなに面白いことができるんだ』と誇りを持てるような場を作りたかった」

その想いから、今回はあえて行政の看板に頼らず、自分たちの手でゼロから作り上げる「大和フェス」へと舵を切った。予算も規模も桁違いの挑戦。しかし、それは会社からの一方的な命令ではなく、社員一人ひとりの人生をプロデュースする力を育むための舞台装置でもあった。

2. 熱量から伝播!──「うちはこんなにすごい会社だったのか」

振り返りミーティングでは、当日運営スタッフとして参加した社員たち(ハンナアカデミー生)から、当時の衝撃と興奮が語られた。普段はトラックのハンドルを握るドライバーや、倉庫管理を行う彼らが、この日はイベント運営者として現場を走り回ったのだ。

「想像の10倍の人が来ていて、正直ビビりました」 入場者数のカウント係を担当した社員は、そう振り返る。カチカチとカウンターを押す指が止まらないほどの人の波。「こんな田舎に、これだけの人が集まるのか」。その光景に圧倒されながらも、次第にある感情が湧き上がってくるのを感じていたという。

駐車場整理を担当した別の社員からは、苦労と誇りが入り混じったエピソードが飛び出した。 「満車で入れないお客様から『なんで入れへんねん』とお叱りを受ける場面もありました。でも、それだけ期待して来てくれているということ。最後には『また来年もやってな』と声をかけられて、やりきった達成感がすごかった」

また、別の社員は、来場者の反応を嬉しそうに語った。 「地域の人たちが『ハンナさん、こんなデカイことやるんや』『またやるの?』と驚いているんです。その時、『あ、俺たちすごいことやってるんやな』って」

普段の業務では得られない、ダイレクトな地域からの反響。そして、「運送会社」という枠を超えて地域を熱狂させているという事実。 「うちはこんなにすごい会社だったのか」──。社員たちの言葉の端々から、自社に対する認識が「ただの職場」から「誇れる場所」へと書き換わった瞬間が見て取れた。

3. 社員の中に芽生えた主体性とIKIGAIの種

ミーティングの後半、西岡氏が「来年は来場者5,000人を目指したい。そして、企画段階からみんなに関わってほしい」と提案した時だった。 社員たちの反応は、単なる業務命令への受諾とは明らかに違っていた。

「やりたいです。次はもっとこうしたい」 誰かに言わされるでもなく、自然と手が挙がる。

「今回はフードエリアのゴミ箱が足りなくて溢れてしまった。次は配置を変えたい」 「子供連れがもっと楽しめるスペースを作りたい。奥のエリアでサッカーをやっていたけど、もっと遊べるようにしたらどうか」 「自分たちスタッフも、もっとフェスを楽しめるようなシフトを組みたい」

次々と挙がる具体的な改善案。そこには、「会社にやらされたイベント」という意識は微塵もなかった。 ある中途入社の社員はこう語る。「普段は一人で運転している時間が長いので、こうやってみんなで一つのことを成し遂げるのが本当に楽しい。会社の全体像も見えてくるし、自分の意見が形になるのが嬉しいんです」

「一人よりも三人、三人よりも十人。みんなの考えが集まって一つの方向に向かう時、会社はもっと面白くなる」 西岡氏の言葉に、社員たちが深く頷く。ただの労働力の提供ではなく、自分たちのアイデアと行動で、地域を、そして会社を動かしていく。その手応えこそが、彼らにとっての「働きがい」そのものになりつつあるのだ。

取材後記

「来年は、俺たちに企画からやらせてください」 ミーティングの中で社員の方々から自然とこの言葉が出た瞬間、私は鳥肌が立つのを感じました。

前回の「交通安全フェスタ」では、どこか「会社主導」の空気感がありました。しかし、今回「大和フェス」へと進化したことで、主語が「会社」から「私たち」へと鮮やかにシフトしていたのです。

西岡取締役が仕掛けたのは、単なるイベントの拡大ではありませんでした。社員が「自分たちの手で世界(地域)を変えられる」という自己効力感を感じられる「場」のデザインだったのです。 仲間と共に熱狂するそのプロセスの真っ只中にこそ、IKIGAIは生まれるのだと強く確信しました。


【企業データ】
会社名:株式会社ハンナ
事業内容:一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送・通過型倉庫・車輌整備
所在地:〒630-8442 奈良県奈良市北永井町372番地
資本金:10百万円
社員数:社員数 147名(2023年4月現在)

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【監修者】熊倉 利和

一般社団法人日本IKIGAIデザイン協会 代表理事/IKIGAI WORKS株式会社 代表取締役/IKGAI広場 編集長

新卒であさひ銀行(現りそな銀行)に入行後、慶應義塾大学大学院(MBA)を経て、セルメスタに転職、2011年に代表取締役に就任。2021年、IKIGAI WORKS株式会社を設立。
健康経営伝道師として350社と750万人にデータヘルス計画や健康経営のコンサルティングを実施。生きがい・働きがいを持って経営を推進するトップランナーらとのインタビューや講演、イベント開催など健康経営や働きがいの普及啓発に取り組む。今では健康経営、ウェルビーイング、人的資本経営を包含し、「IKIGAI経営」の普及啓発へ公私ともに邁進。IKIGAIオタクとしてすべての社会に「生きがい」を広めることを生業とする。

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